昨年末、監査法人トーマツが監査にビッグデータを活用する対象企業を上場している全顧客 900社に拡大する、というニュースがありました。
トーマツ、ビッグデータ監査を拡大 上場する全顧客900社対象 :日本経済新聞
昨年中には、トーマツ以外にも新日本監査法人、KPMG(あずさ)、PwC(あらた)が既に会計監査への人工知能/ビッグデータの活用を検討し始めており、日本の四大監査法人全てがいずれかの形で取り組んでいることになります。
新日本監査法人、ビッグデータで不正チェック 全顧客対象に :日本経済新聞
あずさ、監査にビッグデータ活用 企業の全取引調査 :日本経済新聞
具体的な取り組みは少しづつ異なりますが、主な目的としては顧客の会計データを分析し、不正の疑いがある取引を自動的に抽出する、という点で共通しているようです。監査法人の本業である会計監査の品質を向上させるという面では、真っ先に取り組むべき領域だと思います。
実際の取り組みの内容や成果はもう少し待たなければなりませんが、現段階でイメージするためには、デロイトトーマツが公表している次のレポートが参考になります。
このうち、特に後半に記されている、
- 企業と監査法人のシステムをクラウド・コンピューティング等で常時データ連携
- リアルタイムで取引データを自動的に分析し、(不正に繋がりうる)異常な取引を検知/将来予測
という点は、近い将来に人工知能を活用する上で監査法人が目指していく姿になるのではないでしょうか。
一方で、こうした取組みは会計監査の品質向上や業務の効率化といったメリットはあるものの、企業側の負担(コスト)が増える可能性もあるため、顧客である企業にとってのメリットも明らかにしていく必要があるでしょう。
いずれにせよ、今後数年間で会計監査業務における人工知能の活用はますます広がるとともに、それを活用する公認会計士や企業の財務・会計部門のメンバー等にも更なる専門性が求められると考えます。