今回から、私がこれまでの業務や学習等を通じて経験してきた英文会計の実例とその中で特に気を付けるポイント("急所")を連載します。
USCPA試験の学習にも役立つことを目指しています。
第一回目は、Account receivableです。
概要
Account receivable(AR)は、日本語では売掛金、得意先に商品を販売した時に生じる代金を受領する営業上の債権になります。実務でも頻繁に使用される勘定科目です。
ARは、売上を計上した時に発生し、代金を回収したことにより消滅します。
気を付ける"急所"
通常であればARが増えていくことは売上が伸びているということなので、良い傾向のはずですが、実際にはそうでないケースも多くあります。
企業の成長期には、売上の伸びとともにARも増加していたものが、景気後退や商品の販売不振等による売上の鈍化とともに取引先からの資金回収も滞り、ARだけが積み重なってしまうからです。
こうした兆候をいち早く把握するためには、先ず企業がARの資金回収までにかかっている日数、1) Days Sales Outstanding (DSO: 売上債権回転期間)が役立ちます。
DSOは、
- DSO = Accounts Receivable / Net Credits Sales * Number of Days (365)
により求められます。DSOの日数は、業種や企業の販売形態によって異なりますので、先ずはDSOを定常的に算出して、日数が突発的または徐々に増加していないかという傾向を掴むことが大事です。
また、こうした傾向を把握するためには、 併せて2) Weekly / Monthly Cash Flowを用意しておくことも非常に役立ちます。資金管理に慣れていない企業は、急に短いサイクルのCash Flowを作るのは難しいですから、先ずはMonthly Cash Flowを用意し、資金繰りに応じて徐々にWeeklyなどのサイクルを短くして管理していくのが良いでしょう。
その上で、DSOに明らかな増加傾向が見られた場合は、続いて3) ARのAging list(売掛金の年齢表)を用いて、どの取引先からの資金回収が滞っているかを特定しましょう。
Aging listは、ARの発生から何日経過したか、という情報を取引先別に整理した一覧表です。これにより取引先の特定とともに、何が原因でいつ頃資金を回収できそうか、という状況までを把握することが可能になります。
また、支払い期日から長期間(6ヶ月/1年以上)が経過している場合には、貸倒引当金を計上する必要性も出てきますので、更なる注意が必要になります。
今回のまとめ
ARは、経営が順調な時は良いですが、ひとたび不況等により経営不振に陥った時には丁寧に管理していくことが極めて重要になります。また、ARが急激に増加している場合、売上の過大計上等の粉飾・不適切会計の可能性も疑われます。(私が過去に見た"粉飾"企業の事例でも、不正な収益認識によってARが年々、急激に増加していく傾向が現れていました。資金が増えずに急成長している会社は先ず注意が必要です。)
このような兆候をいち早く掴んで、適切な対処を取るためにも、
- Days Sales Outstanding
- Weekly / Monthly Cash Flow
- ARのAging list
などを活用して、ARの資金回収までしっかり管理しましょう!