新型コロナによる非常事態宣言が続き、更なる感染拡大も懸念されています。今回は、こちらの本で過去の感染症を振り返りたいと思います。
本書は、ペストが大流行した1660年代のロンドンの様子を克明に描いた作品です。著者はダニエル・デフォー、ロビンソン・クルーソーでも有名な作家であり、ペストの渦中に身を置きながら、客観的な視点からペストの発生から収束までを記しています。
一読して感じたのは、未知のウィルスに接した時、人々が取る行動は時代を超えても非常に似通っているということです。
当時、ロンドン市街の一角で発生したペストは、暫く期間を経た上で爆発的に拡大しました。その間、ペストが発生したことを隠すため、実際より少ない死亡者数が報告されていました。
ペストの発生が確認された後、先ず裕福な家庭から郊外に逃げていきました。結果的に、そのことがイギリス各地にペスト感染を拡大させることになります。
また、ロンドンに留まらざるを得なかった多くの市民も、感染を恐れて家屋封鎖して外出を避けたため、ロンドン市街はかつてないほど静まり返ったということです。現代のロックダウン期中の各都市の姿が想い出されます(なお、コロナ期間中によく耳にした"Quarantine(隔離期間)"という用語は、ペストの隔離期間が40日だったことが語源です。)
一方で、一旦、ペスト感染の拡大が収まってくると、市民の一部は次々と外に出て交流を始めるようになり、そのことが新たな感染拡大と死者数の増加も招きました。そして、ペストがようやく下火になった時、人々は泣いて喜び合ったそうです。
コロナ禍を通じて、私たちも似通った経験を多くしてきました。パンデミックという危機に直面した際、このような記録と振り返りを残していくことで、次の新たな感染症への対応につながると強く感じました。(なお、ペストの終息後、ロンドンは長期に亘り景気拡大を続けたことも補足しておきます。)