英文会計で特に気を付ける"急所"の第三回目は、Goodwillです。
概要
Goodwillは、日本語ではのれん、企業の買収や合併等の際に支払われる金額と対象企業の純資産の差額です。
この差額は企業のブランドや品質などから生じる超過収益力を表し、無形固定資産(Intangible asset)としてB/S上に計上されます。
なお、特許権や商標権、顧客基盤等の個別に測定できる無形資産については、Goodwillとは分けて計上されます(この手続きをPPA: Purchase Price Allocationと言います。)
気を付ける"急所"
Goodwillは、目に見えない企業の長期的な収益力を資産化したものです。そのためUS-GAAPやIFRSではGoodwillの定期償却をしない代わりに、その価値が毀損していないか、必ず毎年減損テスト(Impairment test)を行うことが求められます。
この点は、20年以内で規則的な償却を認めている現在の日本の会計基準とは大きく異なります。(なお、上述のPPAで識別された無形資産は、Goodwillとは異なり、それぞれの耐用年数等に応じて毎年償却されます。)
一方で、毎年償却を行わない分、減損テストでGoodwillに価値の毀損が認められた場合に生じる単年度の減損損失の影響額は大きくなる傾向があります。そのため、各企業のB/S上にGoodwillが幾ら計上されているかは注意しておく必要があります。
とりわけ、買収等を通じて成長してきた企業などは、資産規模に比べてGoodwillの金額が著しく大きい場合もあります。こうした企業でGoodwillの減損処理が生じると一気に財務体質が悪化し、債務超過に陥るケースもあります。
こうした影響を事前に見極めるために1) Goodwillの絶対額に加えて、2) Goodwillと純資産の比率(Goodwill / 純資産)を把握することも有効です。もしこの数値が100%を超えていると、Goodwillの価値が無くなれば債務超過に陥ることを示しますので早急な対策が必要です。
今回のまとめ
Goodwillの減損テストの実務では、中期計画等に基づく将来キャッシュフロー等の見積りに大きく依存するため、外部・内部環境の変化や立場による見解の相違などが生じやすいです。そのため、企業の予期せぬ結果が生じることも多くあります。(東芝の2016年度決算が一例です。なお、東芝はUS-GAAPを採用しています。)
一方、減損処理が生じた場合の影響額は相対的に大きく、企業の存続自体に関わることもあります。そのため、
- Goodwillの絶対額(関連するIntangible assetsを含む)
- Goodwillと純資産の比率
などを把握し、影響が大きい場合は資本強化を含めた対策案を事前に検討しておくことが肝要です。