アメリカで働くコンサルタントの本棚

主にM&Aやグローバルビジネスに携わり、USCPAを取得。仕事や自己啓発で役に立つ本や情報等を紹介します。

GEのインダストリアル・インターネット

IoT (Internet of Things)を始めとするデジタル化の流れの中で、最も重要なのは"集めたデータをどのように活用するのか"という点です。

 

この課題にいち早く気づき、取り組んでいるのが米国のGeneral Electric (GE)です。

事業ポートフォリオを常に見直しながら発展を続けてきたGEでは、現在、"デジタル・インダストリアル・カンパニー"を目指してソフトウェアへの集中投資を続けています。

より高い価値を提供する「デジタル・インダストリアル・カンパニー」を目指して - GE Reports Japan

 

その中核になっているのがGEのIoTプラットフォームの"Predix"です。

Predixでは、航空機エンジン等の機器が発信するデータをクラウド上に収集・蓄積し、集めたデータを活用して新たなサービスを実現します。例えば、エンジンに取り付けたセンサーを使って製品の稼働状況を分析し、異常の有無やメンテナンスの時期を知らせること等ができるようになります。 

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GEの狙いは、IoTによっての回りの機器が全てデジタル化した時、生み出される膨大なデータを取り扱うことができるプラットフォームを提供することです。そのために自社だけではなく、他社もPredixをオープンに利用できるように積極的にパートナーを広げています。既にMicrosoftやIntel、日本でもソフトバンクなど数多くの企業がパートナーになっています。

Meet our Ecosystem | GE Digital

 

さらには、販売した自社製品の価値を高めるだけではなく、最終的にはデータ解析技術を駆使して、顧客へのIoTサービスの"成果"から収益を上げることを目指しています。

先程の航空機エンジンの事例でいえば、収集したデータをもとに、

  • 不具合をいち早く見つけて、予防保守を実施し、故障による欠航を防ぐ
  • 最も効率的な飛行速度などのアドバイスを提供する

などを通じて顧客の収益を最大化し、成果に応じた"サービス利用料"を得るモデルです。これにより、GEは製品の製造・販売ではなく、顧客のパートナーとしてソフトウェアやデータ解析技術を活用したIoTサービスを提供する企業に変貌しつつあると言えるでしょう。

 

こうした取り組みを通じて、GEは2020年にソフトウェア事業の売上 40億ドル(約4,400億円)を目標に掲げており、現在でも毎年 約400億円程の投資を続けています。

 

高い品質の製品を製造・販売するだけではなく、巨大なIoT市場で積極的に基幹ソフトウェア・プラットフォームやデータ解析技術を提供し、サービス利用料で稼ぐモデルに大胆に移行していくGEの姿から私たちが学ぶべき点が多くあると感じます。